2010年12月20日月曜日

[You Tube] ビデオ撮影による教員評価

教育政策担当――鈴木

ビデオ撮影による教員評価の導入がアメリカで議論を呼んでいる。
先日、ビル・ゲイツ氏のゲイツファンデーションがビデオ撮影による教員評価推進のために3億3500万ドル(約281億円)投資することを発表した。

真に教員の質向上のために使われるのか、それとも教員の給料削減、テニュアはく奪、公立教育の民営化推進の新たな材料となってしまうのか。こんなパロディーまで現れた。

2010年12月12日日曜日

アメリカ自由市場と高等教育における暴利

Hiroaki Sato, Japan Times (Nov. 28, 2010)—教育政策担当: 鈴木

アメリカの自由市場原理が高等教育(大学、大学院、専門学校)において暴利をもたらしている。更に深刻な問題は、莫大な利益を得ている多くの大学機関が、その「売上」のほとんどを政府から得ていることだ。

これら「営利大学」の問題が浮上したのは今年8月、アメリカ会計検査院(Government Accountability Office)がこれらの教育機関が行っている詐欺的行為そして欺瞞的な経営の実態に関するレポートを公表した時だった。アメリカ教育省がそれに続き、学生ローンの貸倒し率が、これら営利大学では公立大学(6%)と非営利私立大学(4%)に比べ11.6%という倍程度に上り、上昇し続けているとの所見を発表した。

そして最近では、これら営利教育機関らの不適切な経営の実態を暴く新聞記事が次々と発表されている。そのうちの一つ、"Scrutiny Takes Toll on For-Profit College Company" (The New York Times, Nov 9)は、KAPLAN(カプラン)が抱える裁判やその他の問題に言及している。それによると、営利目的の大学は会計検査院の調査では2000程あり、そのうちの15はカプランのような上場企業だという。問題の所在は大まかに3つの要因にある。第一は、入学担当職員にかかるマーケティングのプレッシャーだ。2003年の時点で、フロリダにあるカプランカレッジだけで148名もの「入学担当アドバイザー」がコールセンターに勤務していたが、リクルートした生徒数で決まる給料、そして目標定員に2期連続で届かない者は解雇されるという実態が欺瞞的行為を促した。第二の要因は、営利目的の専門学校が低収入層を主なターゲットとしていることだ。これは、これらの教育機関に入学する大部分の生徒が、本来卒業する見込みも、入学時に約束された高収入を得られる職に就けないことも承知でリクルートしていることを示唆している。第三は、カプランカレッジが主な収入を政府による学生ローンや奨学金に頼っていることにあり、総収入の実に91.5%が連邦政府から支払われている計算になる。

更に驚くことに、これら営利目的の教育機関が全収入の30%をも更なるマーケティングに還元していることだ。莫大な税金がこれらの教育機関によって横領され、更なる税金横領のために投資されているとも捉えることができる。これらの機関にとって生徒の卒業は無関係なため、自然と卒業率も低く、公立大学(55%)と私立大学(65%)に比べ、営利目的の4年制大学ではかろうじて5人に1人が卒業している計算となる。

これらの教育機関の経営者の報酬も愕然とするものだ。11月10日のBloomberg記事によれば、ハーバード大学の学長の去年一年の年収が日本円で約6700万円、Strayer EducationCEOロバート・シルバーマン(Robert Silverman)は、約35億円だった。
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2010年12月11日土曜日

「大部分の生徒がアメリカ統一標準に達してない」との調査結果

By Gewertz, C. Education Week, (Dec 6 2010) 教育評価担当:美馬

現時点で7州を除く全ての州が採択しているアメリカの統一学習標準。ほとんどの生徒がそこで示されている標準レベルに達していないとの調査結果がACT Inc., によって発表された。今回の調査は州及び学校が新しいカリキュラムを導入した場合を想定して、257,000人の高校2年生を対象に行われたもの。結果として1/3から1/2の生徒しか、就職や大学入学に必要な数学及び英語の技能として示されているレベルに達していないことが分かった。例えば数学では、「確率」に熟達しているとみなせる生徒は37%で、「関数」だと40%だという。最も成績が悪かった分野は「数量関係」で、今後の学習に必要な基礎を身に付けているといえるのはわずか34%しかいなかった。また、ACTの担当者は、論理的思考力や数学的モデル化といった“mathematical practice(数学を活用する能力)”を測る問題で、1/3の生徒しか標準レベルに達しなかったことを憂慮している。調査結果から生徒の学習状況や統一学習標準の導入に向けての課題を読みとることは有意義である。ただしその際には、新標準に即した指導が未だ本格的に始まっていないことを考慮しなければならない

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2010年12月9日木曜日

OECD国際学力調査 科学では国際水準に上昇

By Robelen, E. Education Week (Dec 7, 2010)―教育政策担当:鈴木

今日発表されたOECD国際学力調査(PISA)の結果、アメリカの学生が科学で先進国の水準に上昇したことが分かった。数学では前回のPISA 2006の点数から上昇はしたものの、依然として国際水準には到達しておらず、読解力ではほぼ国際水準で前回と横ばいの結果となった。国内的には今回の結果に対して前向きな捉え方が多い中、連邦政府教育長官 Arne Duncan (アーニー・ダンカン)は今朝ワシントンで開かれた教育フォーラムにて、次のように懸念した。「正直に言って、PISAの結果は、多くの先進国が我々に教育で勝っていることを示している。アメリカ人はこの教育的現実に目を覚まさなければならない。」

(記事原文)