2011年6月8日水曜日

教育費の国際比較は可能なのか?(1)

多くの国では、教育の質を測る一つの指標として、どの程度の金額を支出しているかが用いられている。そして、その国際比較はOECDが長い間行っていることである。下記のグラフは日本の報道機関の物だが、いわゆる先進諸国のGDP(総経済規模)に占める教育支出の割合の比較のグラフである。

グラフ

このグラフを見る限り、日本は経済規模からすればアメリカや他の先進諸国に比べて、少ない額しか教育に出費していないように思われるのだが、この単純な比較ではいくつもの重要な点が抜け落ちている。そういった点を考慮すると、「特定の国の公的教育支出が国際的に高い(低い)」という主張は、比較する立場により結論が大いに異なるというのが筆者の概観である。

まず、この単純な主張で考慮されていない点を以下に箇条書きしよう

1,生徒一人当たりの出費はどうなっているのだろうか?子どもが多い国では、同じ教育サービスを提供していればその分出費は増えるのではないか。

2,為替レートというのは激しく変動するものだと言われているが、異なる通貨の間で金銭額の多寡を測るのはどうすれば合理的なのだろうか?この数年で1ドル120円から79円まで変化したために、単純に為替レートで比較すると、支出額は全く変化していないのに、ドル建てで見れば日本の教育費は50%も増額されたことになる。異なる通貨を持つ経済における金銭額で表される交換価値が、果たして異なる国の出費額を比較する上で適正なものなのだろうか?

3,そもそも、支出の内訳はどうなっているのだろうか?それ以上に、お金をかけていれば無条件に高い質の教育を提供していると言えるのだろうか?設備は整っていないが先生の多い学校と、先生は少ないが図書が多くてきれいな建物の学校とでは、お金の使い方としてどちらが良いのだろうか?単純にお金の額が多いとしても、賢い使い方をしてなかったら比較としては意味が無いのではないだろうか?

これから数回に分けて、以上の問題について簡単に説明してみたい。

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