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2011年2月9日水曜日

教員は「国家の建築家」!? ~ESEAの改正、更新に向けて~



教育政策担当: 鈴木


2001年に No Child Left Behind  (NCLB) の名称で再採択されて以来、アメリカの教育の基本的枠組みとなってきた Elementary and Secondary Education Act ESEA - 初等中等教育法)。大学以前の初等中等教育改革は、政治的に二分された議会が歩み寄れる数少ない分野だとして、オバマ政権はこの法案の更新に向けて全力を尽くしている。

つい一昨日(2月7日)、米連邦政府教育長官 Arne Duncan (アーン・ダンカン) は、ESEA の更新の必要性を説くビデオメッセージを Facebook  に掲載した。この法案は批判も多く、様々な課題点をいかに克服するかということにメッセージの焦点が置かれている。課題と対応策は以下の通りだ。

1.    優れた教育実践を伸ばすことより、悪い実践を罰することに重点が置かれている。
ß 罰するのではなく、良い実践に報酬を与えていくべき

2.    実に細部にまで至る処方を押しつける窮屈な政策である。
ß 一般教書演説でオバマ大統領が、「この時代における最も有意義な教育改革」と豪語した Race to the Top のような柔軟性を与える

3.    結果的に多くの州がペナルティーを避けるために学力標準を下げている。
ß 40以上の州が既に Common Core Standards を自主的に採択している

4.    評価の対象は数学と国語の2科目だけであるため、他教科が軽視される傾向を生んでいる。(特に、成績が伸び悩む地域や学校では他教科にかける時間が大幅に削減されている。)
ß 数学と国語以外の教科が軽視されないようにする。

これらの他に、ダンカンは一般教書演説でオバマ大統領が述べた「教職の地位向上」を特に強調している。韓国を見習い、アメリカでも教員を 「国家の建築家」 “nation builder”として敬わなければならないと言う。

確かにその通りだ。尊敬できない教員からは子どもは何も学ぶことはできない。そのためにも、教員が尊敬されるような社会体制を築いていくことは非常に大事だと言える。

しかし、ではそのような社会体制を築くためにいかなる政策を取っていくのか。ダンカンは、最初の課題の対応策として述べたように、優秀な実践に報酬を与えることを強調する。「子どもたちのために劇的な効果を追い求めるために、まず第一に勇気、そしてキャパシティーと真摯に取り組む姿勢を兼ね備えている自治体に、我々は過去に類を見ない額の資金を投資するのだ。」

何故 「第一に勇気」 なのか。過去のオバマ政権のスタンスを見れば、これが、柔軟な教員の解雇を意味していることがすぐにわかる。ロードアイランド州である教育委員会が、一つの学校の教員を総解雇した際、オバマは賛同の意を表明したし、Race to the Top でも school turnaround (底辺校の再生) と称して、そのような教員解雇及びメリットペイを支持した。つまり、オバマ政権が選択する 「教職の地位向上」 のための手段とは、柔軟な教員解雇及びテストの点数によるメリットペイに他ならない。

教員評価が何故難しいか、またテストの点数に依存するメリットペイの様々な問題点については、全米に広がる教員評価を考える 』で述べた通りだ。また、オバマ政権は一貫してチャータースクールの増加を支持してきた。先に述べた課題1の対応策からは、今後一層、成果を出している一部(17%)のチャーターに税金を投資、支援、フランチャイズする可能性も十分うかがえる。更には、オバマ政権は alternative certification programs (非正規教員免許認定プログラム) も支援してきた。これらの政策は、どちらも公立学校に勤める正規の教員にとっては、自分たちの立場を危険にさらす脅威である。

「将来の選択肢に迷っているんだったら教員になるんだ。国が君たちを必要としている。」と一般教書演説でアメリカ中の若者に呼びかけたオバマ大統領。きっと今現場で働いている教員は、「若い層を入れることによって我々を早く追い出そうとしているのだ」と思うに違いない。前回の記事で紹介したYong Zhaoの言葉が思い出される。

 
「目的地は正しいが、誤った道を選んでいる。」


仕事の評価をテストのみで下し、より解雇をし易くし、チャータースクールや非正規免許制度の促進によってプレッシャーをかけ、結果として教員に、「いくらでも代わりはいる」というようなメッセージを送り続けてきたのがオバマ政権なのだ。
 

*ここに書かれている意見は、完全に筆者個人のものであり、このブログやティーチャーズカレッジを代表するものではありません。