2010年12月12日日曜日

アメリカ自由市場と高等教育における暴利

Hiroaki Sato, Japan Times (Nov. 28, 2010)—教育政策担当: 鈴木

アメリカの自由市場原理が高等教育(大学、大学院、専門学校)において暴利をもたらしている。更に深刻な問題は、莫大な利益を得ている多くの大学機関が、その「売上」のほとんどを政府から得ていることだ。

これら「営利大学」の問題が浮上したのは今年8月、アメリカ会計検査院(Government Accountability Office)がこれらの教育機関が行っている詐欺的行為そして欺瞞的な経営の実態に関するレポートを公表した時だった。アメリカ教育省がそれに続き、学生ローンの貸倒し率が、これら営利大学では公立大学(6%)と非営利私立大学(4%)に比べ11.6%という倍程度に上り、上昇し続けているとの所見を発表した。

そして最近では、これら営利教育機関らの不適切な経営の実態を暴く新聞記事が次々と発表されている。そのうちの一つ、"Scrutiny Takes Toll on For-Profit College Company" (The New York Times, Nov 9)は、KAPLAN(カプラン)が抱える裁判やその他の問題に言及している。それによると、営利目的の大学は会計検査院の調査では2000程あり、そのうちの15はカプランのような上場企業だという。問題の所在は大まかに3つの要因にある。第一は、入学担当職員にかかるマーケティングのプレッシャーだ。2003年の時点で、フロリダにあるカプランカレッジだけで148名もの「入学担当アドバイザー」がコールセンターに勤務していたが、リクルートした生徒数で決まる給料、そして目標定員に2期連続で届かない者は解雇されるという実態が欺瞞的行為を促した。第二の要因は、営利目的の専門学校が低収入層を主なターゲットとしていることだ。これは、これらの教育機関に入学する大部分の生徒が、本来卒業する見込みも、入学時に約束された高収入を得られる職に就けないことも承知でリクルートしていることを示唆している。第三は、カプランカレッジが主な収入を政府による学生ローンや奨学金に頼っていることにあり、総収入の実に91.5%が連邦政府から支払われている計算になる。

更に驚くことに、これら営利目的の教育機関が全収入の30%をも更なるマーケティングに還元していることだ。莫大な税金がこれらの教育機関によって横領され、更なる税金横領のために投資されているとも捉えることができる。これらの機関にとって生徒の卒業は無関係なため、自然と卒業率も低く、公立大学(55%)と私立大学(65%)に比べ、営利目的の4年制大学ではかろうじて5人に1人が卒業している計算となる。

これらの教育機関の経営者の報酬も愕然とするものだ。11月10日のBloomberg記事によれば、ハーバード大学の学長の去年一年の年収が日本円で約6700万円、Strayer EducationCEOロバート・シルバーマン(Robert Silverman)は、約35億円だった。
記事原文

0 件のコメント:

コメントを投稿